【前回までの星唄M】
イロハが何かに囚われている白昼夢を見た冒険者は、異変を察し、醴泉島へ直行する。
醴泉島には先にテンゼンも到着していたが、彼の前にある醴泉島のクリスタルからは
あの輝きは失われ、代わりにどす黒いモヤと影を確認することが出来た。
その影こそが暗闇の雲が残した欠片が増大したものであった。
冒険者とテンゼンはその根源を叩くために鳳凰丸の導きに従って、
ラテーヌ高原のストーンサークルに向かう。
そこで、ヴァナ・ディールに様々な形で存在する大いなるものたちが、
一堂に会し、冒険者への力添えをするのだった。

■ 真のフェイス

大いなるものたちの息吹が宿った勾玉を持った冒険者は、
急ぎ醴泉島の祠に戻ってきたが、そこは既に以前の若々しい輝きに満ちた
クリスタルのあった場所とは思えぬほどの状況であった。
周囲はどす黒く影に覆われ、クリスタルはかろうじて見える程度。
はっきりと何か異形のものがそこにいることが分かる。

その惨状に絶句する

テンゼンがクリスタルに駆け寄ろうとした……が、
あまりの光景に足が止まってしまう。

すると、その動きに反応してか、影の中から爪を覗かせた。
狙いを定めたその爪は、まっすぐテンゼンを突いた。
冒険者も咄嗟に武器を構えた。

テンゼン
来てはならぬでござるッ……!
力がごっそりとそぎ落とされたような、この感覚……。
あれに触れては、ならぬでござる……。


冒険者の方に振り返り、静止しようとするテンゼンの背後からは、
爪がとどめを刺そうとゆらゆらとテンゼンに迫っていた。

制止するテンゼン

……これでは……これでは、あの時の。
ヴァナ・ディールを救うことに失敗したときと同じ状況ではないか。

その瞬間、勾玉から言いようのない力が溢れた。

鋭い閃光が、テンゼンを貫こうとしていた爪を引き裂く。
赤茶色の髪、色鮮やかな黄色い服を身につけ、短剣を手にしたその姿。

(ライオン!?)

テンゼン
ライオン殿!?いったい、どこから!?

勾玉が再び光る。
すると、今度はプリッシュが現れた。

プリッシュ
おっしゃー! いッくぜぇえーーーー!?

一体、これは……どういうことだろうか。
彼女たちは実体があるようでいて、どこか幻のようにゆらゆらと揺れているように見える。

テンゼン
そなた……本物のプリッシュ殿ではないのでござるなッ!?

ライオンとプリッシュが現れた

そうか、これは「フェイス」。
最近冒険者たちの間で話題になっている、
人と人の間にある信頼・親愛・友情といった重要な絆から、力を生み出す新たな魔法。
その絆が強固なものでなければ、相手の分身を呼び出すことは出来ない。
彼女達とのこれまでの絆が、今、ここにこうしていつも以上に強力な力となって
目の前に現れているのだった。

ライオン
この時のために……
アルタナの女神さまは、クリスタルは、ヴァナ・ディールは、
この力を授けてくれたのね。


冒険者の方を向くライオンとプリッシュ。
それに大きく頷いた冒険者。

取り出した勾玉を掲げると、さらに強力な光を放ち、フェイスを呼び出していく。

赤いアドゥリン様式の装束と、髪をまとめたリボンが小さく揺れている。

(アフマウ!!)

???
再結成した未来タッグ……スペシャル・ダブル・アクト・ステージのはじまりよ!

舞い踊るようにその場に現れたのはリリゼット。
二本の短剣を構える姿は相変わらず絵になっている。

銀色の髪をなびかせて現れたのはアシェラ。

アシェラ・V・アドゥリン。加勢いたします!

キリリとした表情が美しい。

リリゼット、アシェラ、アフマウも

冒険者と、まだ最初に受けた傷が癒えていないテンゼンを囲むように、
彼女たちと闇の爪先が対峙した。

先に仕掛けたのは爪のほうだった。
即座に反応したアシェラとリリゼットがその攻撃を弾く。

アフマウが強力な回復魔法をかけてテンゼンを癒すと、
彼の身体には再び力がみなぎった。

アフマウ
もう大丈夫。みんなは、わらわが守ります。

そういって、テンゼンの手を取るアフマウ。
ライオンがテンゼンにも手を貸すように言った。

プリッシュ
<冒険者>をクリスタルの中へ導くのが
俺たちの役目だろ!


テンゼンが頷く。

リリゼット
フフフ。ウォーミングアップは十分、そっちは?

振り返った彼女に対して、
片腕をぶんぶんと回しながらプリッシュはいつでもOKだと答えた。
その答えにリリゼットはウインクで答える。

ゴー!

ぐっと沈み込んだ姿勢で、走りだすプリッシュとリリゼット。
露払いをするように、リリゼットが先頭で爪先から放たれる攻撃をいなしてゆく。
短剣を自在に操りながら、実に華麗に。まるで演舞を見ているようだ。

徐々に敵の本体へと近付いていき、
ひときわ大きな爪の攻撃を紙一枚のところで避け、さらに強力な攻撃を繰り出した。
その攻撃にひるんだスキを見て、リリゼットはプリッシュに手を差し出した。

その手を足場のように利用して、プリッシュが飛んだ。
プリッシュの強力なキックが爪にヒットした。

しかし、まだ攻撃は止まらない。

左右に分かれた二人の間から今度はアシェラの魔法が飛んできた。

アシェラ
動きは止めました。

ライオン
いい連携ね。

ライオンが姿勢を低くした。

ライオン
この世界が変わるかもしれないってときに
じっとなんかしてられないわ!


爪の攻撃を巧みに交わしながら攻撃を細かく加えていくライオン。
さらに、その爪の上に乗り、手にした短剣で切りつけた。

ライオンの攻撃

ライオン
アシェラ!

広げていた両手を胸の前にあわせ、アシェラが魔法を放った。
鋭い針のような無数の魔法の軌跡。
その魔法の発動に合わせて、ライオンが高く飛んだ。
広範囲の魔法は敵をとらえ、さらに上空のライオンからも投げ爆弾が落とされた。

一気呵成とはこのことか。

冒険者もこの勢いを後押ししようと走り出した。
しかし、それをテンゼンに止められてしまう。

テンゼン
イロハ殿を助けられるのは
大いなるものたちの力を受け継いだ<冒険者>殿のみでござる。
ここは我々に任せていただきたい!


冒険者はその力強い言葉に少し気おされたほどだった。
武器を収め、その場の状況を見つめる。

テンゼンが軽く下げた左足に力を込め、刀を抜こうと鞘を回した。

既にかなりのダメージを与えていると思われるのに、
敵の攻撃は相変わらずすさまじく、プリッシュたちは走り回っていた。
その時、爪の先がリリゼットをかすめた。

倒れるリリゼット

弾かれるように倒れたリリゼットのそばにすぐにアフマウが駆け寄り回復魔法をかける。
彼女に追撃がこないように、ライオンがプリッシュに左に行くように指示を飛ばしながら、
自らも同じ方向に向かって走って行った。
敵の目の前を大きく横切った二人の動きは、リリゼットから一瞬だけ注意をそらすことに成功した。
しかし、すぐにまたリリゼットに攻撃しようと狙いを絞っているように見えた。
そう感じたライオンは、今度は敵の本体の方に向かって走りこみながら短剣を投げつけた。

手ごたえはあった。
だが、闇の爪はリリゼットとその回復をしているアフマウに向かって、
まっすぐと振り下ろされていった。

アシェラ
させません!

二人のそばに駆けつけたアシェラが、敵の攻撃を弾き飛ばしてくれた。
アフマウは回復を終え、リリゼットも意識を取り戻したが、状況は芳しくない。
爪先はなおも攻撃を繰り返そうとしている。
ライオンとプリッシュも倒しても倒しても現れる闇の爪先に少し後ずさりしていた。

そのとき、甲冑のこすれあう音がした。
指で鍔を押して、抜刀の準備をする。

アシェラとアフマウの間を走りぬけ、一気に刀を抜いた。

テンゼン
天つ水影流……花軍!!

左から右へ、大きく敵を斬りつける。
鳳凰丸に宿るフェニックスの力だろうか、
その太刀筋は赤く広がった。

花軍

テンゼン
勢いは弱まっているでござる。
いまこそ、我輩たちが力を振り絞るとき……!


アフマウがさらに爪先の動きを封じる魔法をかけた。

アシェラ
イロハへの道を切り拓きましょう。

魔法を展開するアシェラ

魔法が一気に展開され、彼女たち全体に力となって行き渡る。

ライオンが走り始めるのを見逃さなかったリリゼットが、
手元の短剣をライオンに向かって投げ渡すと、
それを受け取ったライオンは攻撃を回避しながら素晴らしい手捌きで連撃を加えていった。

リリゼット「このナイフを!」

反対側からはプリッシュが走りこんだ。
今度は敵の爪を足場にして大きく跳躍し、
重力を最大限に活かしていそうなキック攻撃をお見舞いした。
続くリリゼットは華麗にトルネードスピンをするようにして敵に蹴りを入れる。

リリゼット
ここは、あんたがいていい世界じゃないのよッ!!

……ひるんだ!
敵がこれまでとは異なり、明らかにクリスタルの中に逃げ込むようにひるむ様子を見せた。

テンゼンが目を閉じ精神を統一する。
鳳凰丸を赤々とした炎が包んでいた。

その力、お借りするでござる

テンゼン
鳳凰丸よ……。
クリスタルを包む闇を晴らすため……
その力、お借りするでござる……!


刀を脇に構え、中央を駆け抜けるテンゼン。
まるで刀の勢いで跳ね上がったかのように高く飛び、
振り上げた刀を一気に振り下ろした。

テンゼン
とぉおおおりゃああぁぁぁ!!!

闇を払う!

そのすさまじい威力と熱量は、
彼らの戦いを見守っていた冒険者にまでダイレクトに伝わってきた。

フェニックスの光に包まれた祠の中。
さっきまで包み込んでいた闇が晴れていた。

今のうちに……とテンゼンが冒険者を促す。
ここからは冒険者にしかいけない場所の、冒険者の戦いだ。

みんなありがとう

道を切り拓いてくれた
ライオン、プリッシュ、アフマウ、リリゼット、アシェラ、そしてテンゼンに
感謝しながら、冒険者はクリスタルへと歩み寄る。
見送る彼女たちが冒険者に声をかける。
その言葉に大きく頷き、力強く前へと。

役目を終えた彼女たちは勾玉に戻っていくようにその場から消えた。

目の前にはクリスタル。
そして、中には……。

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お約束
・ 前提として、全てのミッションをクリア済み(三国ミッションも三国全てクリア済み)の状態でミッションを進めているとお考えください。
・ 登場人物も多いため、人物登場時にできるだけ違和感のない感じで説明を加えるようにしていますが、詳細な設定などについては、あえて省く場合があります。
・ 自身の感想部分については、該当部分をクリア時にメモした当時の感想をまとめています。

多分、星唄をプレイした人の大半が印象に残ったであろうイベントシーン。
闇の爪に対してのシーンは時間にすると6分ほどの長さになります。
それぞれのアクションとヒロインたちの性格がすごくマッチしていて、
かっこいい場面なのでぜひ動画でも見てもらいたいのですが、
それを文章で再現するとなると本当に難しくて時間がかかってしまいました。
でも、なんとか書ききれたんじゃないかなと思います。

このシーンを見たあとの私はしばらく呆然としてしまいました。
それくらいアクションがすごかった。
一緒にいたパーティの人も「すごかったね」とただそれだけの感想だったのですが、
他に言葉が出ないくらいだったんだと思います。
しばらくしてから、「スタッフがんばりすぎてた」とか色々話していましたけどね。

このシーンや、失われた未来のこれまでのNPCが一堂に会するシーンは
間違いなく星唄の名シーンの3本の指に入るでしょうし、
もしかしたら、これまでのFF11の屈指の名シーンとして
5本の指に入れる人もいるかもしれませんね。

今ならまだアテレコ動画のほうでこのシーンを確認することが出来ます。
https://youtu.be/UUvQb59m01M
(今回のシーンは8分40秒あたりから)


← ひとつ前の話 ヴァナ・ディールの星唄27 「眠りの底で」から「イロハを救え」まで
→ 話のつづき ヴァナ・ディールの星唄29 「勾玉の輝き」
最初から……ヴァナ・ディールの星唄 1

  
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