【前回までの星唄M】
クリスタル内部でとらわれたイロハをフェニックスの力で解放すると、
その力は「暗闇の雲」の「欠片」が実体化を引き起こした。
実体化によってようやくまともに戦うことが出来るようになったイロハと冒険者は
苦闘の末についに暗闇の雲をちり一つ残すことなく消し去ることに成功する。
ヴァナ・ディールの未来はまだ続く。しかし、その場に冒険者はいなかった。

■ すべてが星の唄となる

あの瞬間。暗闇の雲の力が一点に収束し、破裂したとき。
すぐそばにいた冒険者はそれに巻き込まれてしまったのだろうか。

涼やかな虫の声が聞こえる。
竹の葉が擦れる音がする。
水のせせらぐ音がする。

自分の身体がどこか自分のものではないような感覚を少し覚えながら、
いつの間にか冒険者は醴泉島の川のほとりにいた。

(生きてる……?)

まずはここがどこかはっきりと分かる場所へ……と足を運ぶ冒険者。
そこに聞こえてきたのはイロハの声だった。

イロハ
師匠ーーーー!!!

イロハとの再会

彼岸花が咲きほこる中、イロハと再会を果した。

イロハ
よもや暗闇の雲と相打ちかと、甚だ、気を揉みましたぞ!

まだはっきりとしない自分の意識と格闘しながらも、
今はただ、イロハが無事でいてくれたことにほっとしていた。

イロハはこの状況下にありながらも、自身の身を案じてくれる師匠に感謝した。
合わせてセルテウスの無事も報告をした。
今は冒険者のために力を割いているらしく、姿を見せることは出来ないらしい。
セルテウスは「ひんがしのクリスタルは任せてくれ」と言葉をかけてくれたようだ。
イロハにとっては何よりもそれは頼もしく、嬉しい言葉だろう。

イロハは冒険者を待つほかの者たちがいると言っている。
イロハのあとを着いていく冒険者は、身体の違和感は少しずつ拭えてきたものの、
落ち着いてきたところで、島そのものへの違和感を感じ始めていた。

小さな違和感が拭えない

先へと進むイロハを呼び止め、
あの戦いのあと、一体どうなってしまったのかをイロハに確認した。

イロハ
師匠のおかげで、暗闇の雲は霧散した次第でございます。

大いなるものの力を蓄えていた勾玉は最後の力の解放を行ない、
それが「時の風」となって、
弱っていた暗闇の雲を一片の欠片も残さずに吹き飛ばしたらしい。

イロハ
ただ、力強い風ゆえ、師匠ご自身も多大なる損傷を被り……

あぁ、全て言わなくても分かっている。
この身体の違和感はそういうことか。
おそらくだが、私は「クリスタルに還った」のだろう。

そういうことならば、自ずともう一つの違和感の原因も分かる気がした。
この醴泉島にはあれほどいたモンスターたちが一切いない。
そのことをたずねてみると、
イロハはあっさりと、ここが「あの」醴泉島ではないことを認めた。

イロハ自身も未だにフェニックスの力を帯びたあの状態を保ったままだし、
どことなく、フェイスとなったライオンたちが駆けつけてくれたときのような、
どこか幻のような気配を漂わせている。

冒険者を待つ者たちの元へと促すイロハは、
落ち着いてはいるものの、少し急いでいるように感じられた。
時間がないということなのだろうか。

少し進み、鳥居が並んだ坂の上には、
ライオンを中心にアフマウ、アシェラ、プリッシュ、リリゼットが並んで待っていた。
彼女たちは……フェイスではない。本物だ。

皆が冒険者のために集まっていた

(彼女たちは一体どうやってここに。)

イロハ
セルテウス殿の計らいで、特別に意識を繋いでいただき申した。
皆の魂からなる唄……「星唄」をうたい、師匠を癒やすがために。


冒険者を囲んで話す彼女たち。
冒険者と同じ時代に生きて、共に歩んだ仲間たち。
その輪の中には入らず、一人それに背を向けるように祠へと向かうイロハ。
同じ時代に生きていれば、イロハもこの輪の中で互いの冒険を讃えあったのであろう。
だが、それが出来ないことは分かっていた。

別れが近い

イロハの方に目をやるライオン。

ライオン
うん……。
最後の、別れの時が近いみたい。
イロハの元に、行ってあげて。


冒険者はその場から離れ、イロハの元へ行く。
祠の前で一人たたずむイロハは、
振り返ることなく、岩戸を見つめながら話しはじめた。

イロハ
私めの旅は
ここから始まり、ここで終わる……。
否、これは「新たな始まり」と言えましょうか。

師匠。
私めがいなくなっても、
皆様方と共に明るい未来へと歩み続けてくださいませ。


そういって振り返ったイロハは、
少し寂しそうに、それでいて、やわらかい笑みをたたえていた。

歩み続けてくださいませ

光を集め、道を照らしてきた勾玉を取り出したイロハは
それを冒険者の目の前で消してみせた。
大事なものではないのかと驚いた冒険者に、
イロハは勾玉はあくまでも象徴なのだと話した。
勾玉がなくても、冒険者の周りには、ここに来ている彼女たちはもちろん、
彼女たち以外にも沢山の光輝く魂に満ち溢れていると言った。

イロハ
そして……

イロハはその場に正座した。
両の手をそっと前に合わせた美しい姿勢で冒険者に座礼をする

ありがとうございました

イロハ
師匠。
改めまして、14年ありがとうございました。


そのままの姿勢でイロハは続ける。
未来への思い、再び、冒険者と出会えるかもしれないという期待。
それが心から楽しみだ……と。

だが、イロハも冒険者も分かっている。
未来に会うイロハが、今、ここにいるイロハではないことを。

セルテウス殿のクリスタルが このまま輝き続けるならば、
そのような未来は予想よりも早く来ることでしょう。

そして
我が父上と母上が健やかならば、私めが生まれ落ちる未来がありましょう。


もちろんその子はイロハかもしれない。
だけど、共に旅した仲間であるあなたとは異なる存在。
どうにもならないことは分かっていても、
冒険者自身、もどかしい思いでいっぱいだった。

そんな心を察してなのか、イロハは顔をあげた。

イロハ
私めの存在が消え去るということは、
未来の私めが命がけで過去へと遡る必要がなくなるということ。
すなわち、ヴァナ・ディールの未来は完全に守られたということ。


イロハ
師匠。
これは、別れではございませぬ。
そう……これは旅立ちであり、始まり。


(分かった)
冒険者はイロハをまっすぐ見つめて頷いた。

イロハが短刀を取り出し、自分の髪の毛に触れると、
その刀で束ねた髪の毛を切り落とした。

髪を切るイロハ

イロハの宝だと言っていた自慢の髪。
「髪は女の命」
ミザレオの滝の前でおにぎりを頬張りながら、
そんな話をイロハとしたことがあった。

束ねられた髪には淡い光の結晶が舞っていた。
おそらく鳳凰の力がそこに宿っている。

鳳凰の力を預かった

イロハ
私めが旅から帰ってくるまで……
師匠に、鳳凰の力を預けます。


髪を切ったそのときから、イロハの周りをまとっていた、幻のような空気は消えた。
この瞬間、彼女は彼女の命をかろうじて繋いでいたものを切り取ったのだ。

差し出す髪の毛を受け取った冒険者。
それと同時にイロハの身体か発光を始める。

今までは何度消えても、必ず帰ってきたイロハ。
でも、今度は違う。
もうこのイロハは帰ってはこない。

イロハ
では、ごめん!

では、ごめん!

にこやかに微笑むイロハが浮かび上がり、まるで女神のように明るく輝く。
強い光は柱となって、この世界に最後の別れを告げた。

さようなら

思い出す 独り立ちの日
時が経ち 家族となり
走りつかれて 見上げれば
星の唄と 絆のコーラス


ヴァナ・ディールの星唄ED

今こそ響き渡れ 世界の名前はヴァナ・ディール
神の子 冒険者よ クリスタルのもとへ
希望の旅は続く はるかとこしえに


イロハは……

<You>, Savior of Vana'diel

──。

クリスタルの中でうずくまる一人の冒険者。
瞳を開くと生命の流れに身をゆだねた。
また新たな日々が始まる。
新たな冒険も始まるだろう。
光は沢山満ちている。その中にイロハの光も当然ある。

降り立ったのは醴泉島のクリスタルの前。
右手にはしっかりとイロハの髪を握って。

またイロハに会えたときには、新しい物語が始まるはず


おかえりなさい

ヴァナ・ディールに お帰りなさい


<Fin.>

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お約束
・ 前提として、全てのミッションをクリア済み(三国ミッションも三国全てクリア済み)の状態でミッションを進めているとお考えください。
・ 登場人物も多いため、人物登場時にできるだけ違和感のない感じで説明を加えるようにしていますが、詳細な設定などについては、あえて省く場合があります。
・ 自身の感想部分については、該当部分をクリア時にメモした当時の感想をまとめています。

三章終了。そして、ヴァナ・ディールの星唄が終幕を迎えました。

三章のサブタイトルに隠された縦読みは
>> さらなるせかいのひろがりおたのしみつつこれからもよろしくおねがいします <<
でした。

最初、星唄をスタートさせた時は、イロハにここまで愛着を覚えることになるとは
思わなかったし、最後はなんとかならないのかとも思いました。
でも、同時になんとかしちゃいけないとも思いました。
ゲームの中の冒険者と同様に、私自身もまたものすごく葛藤した部分です。

演出が本当にすばらしく、自然と涙がこぼれていました。
特に細かなこだわりを感じたのはエフェクトの使い方。
キャラクターにブラーがかかっている部分とかかっていない部分の使い分けです。

髪の毛を切った瞬間、イロハからエフェクトが消え、
「あっ」と思わず絶句してしまいました。

そして、BGMの使い方も素晴らしかった。
11の定番曲である「Recollection」。
そこからメインテーマの「ヴァナ・ディールの星唄」へ。
切り替わりはイロハが勾玉を消したところ。
イロハの美しい座礼のところからイントロがはじまりましたね。

ヴァナ・ディールが消えてしまう。
このスタートに、多くの人が現実のFF11のサービス展開の状況と
シンクロさせて考えたのではないでしょうか。私もその一人です。
その結末は新たな冒険を予感させる終わりとなりました。

今回、このようにまとめるあたって、
そこだけはきちんと伝えなければと思いました。

全30回。
すばらしい原作があってのことですが、
こうしてお話をまとめきることが出来てよかったです。
私が星唄をクリアしたのは2015年12月ですので、5ヶ月ほどかかりました。

FF11をやったことがないと言う方が、
この星唄の更新を楽しみにしていると言って下さいました。
そんな人にもヴァナ・ディールの良さが少しでも伝わればと、
自分なりに書いてきたつもりです。
ただ、中にはプレイヤーには常識と思われることに対して説明を加えたり、
自分なりの解釈で文を加えたところもあり、読みにくくなったところもあったかもしれません。

また、私の受けた印象とは違う解釈・感想をお持ちになった方もいると思います。
当然ですが、自分で得たもので星唄を楽しめればそれで正解なんだと思います。

動画で分かりやすく残してくださっている方も沢山いる中で、
あえて、この長い文章を読んで下さった方々に御礼申し上げます。

原作はもっと自分で想像の幅が広がるような、素晴らしいシナリオになっています。
まだクリアしていないという方がもしここをお読みでしたら、
ぜひ、クリアを目指してがんばってください。ありがとうございました。


← ひとつ前の話 ヴァナ・ディールの星唄29 「勾玉の輝き」
最初から……ヴァナ・ディールの星唄 1

  
コメント

お久しぶりです。星唄ストーリー完結おめでとうございます。
11を全然知らない奴ですが、続き物の物語としてめっちゃ楽しませてもらいました。
自分は14のイロハちゃんしか知らないのですが、11のイロハちゃんはマンガっぽいなーと思ってたんですが、
今は11のイロハちゃんのほうがかわいいし健気でいいと思ってますw
シナリオライターは元14シナリオを書いていた方なんですよね?
14にもこんな心をかきむしられるようなストーリーを残して欲しかったです。
またこれから1回目から読み返したいと思います。
ロイド│URL│04/21 20:00│編集

■ ロイドさん
こんにちは。無事まとめ終えることが出来ました。
少しは楽しんでいただけたようで何よりです。
FF14のイロハは多分FF11をメインにプレイしている人からすると
「どうしてこうなった!」と思ってしまうくらいです。
(やわらかい言葉でいうと老けたというか……なんと言いますか)

星唄のシナリオは佐藤弥詠子さんがメインで担当され、
旧FF14でもメインシナリオを担当されていました。
ただ、正確な時期は記憶があいまいなので出せなくて申し訳ないのですが、
新生では佐藤さんはごく初期にプランナーとして参加された程度で、
メインシナリオライターは名目上*は前廣さんのはずです。
(*話によって吉田さんがメインで書かれている部分がある為)
どちらのお話が好きかは人にもよると思いますが、
佐藤さんが担当された旧14のストーリーは、
幾重にも積み重なったエピソードから自然と世界が伝わってきました。
もし、ご覧になったことがなければぜひどうぞ。
れあ│URL│04/22 18:21│編集

出遅れてしまったー!まとめ完遂おつかれさまでした。
読みながらクリアしたときの気持ちを思い出して泣きそうになりました。
年のせいか涙もろくなってしまいました。
イロハの髪のことはもやもや表示させてたのに全然気が付きませんでした。またヴァナにインする楽しみができました。
れあさんが景色のことや、キャラの動きのこと、細かく書いてくれていたおかげでその光景が目に浮かぶようでした。
真のフェイスの闇とのバトルのところは、多分僕が考えているよりもすごく時間がかかったんだろうなーと思います。
本当におつかれさまでした。

追記) れあさん、ツイッターやっていたらリンクしてもらえませんか?もしくは拍手だけでもおきませんか?
きっとコメントはできなくても拍手は送りたいという人が結構いると思うんですよ。
やんばるくいな│URL│04/22 19:24│編集

■ やんばるくいなさん
こんにちは。お読みいただいてありがとうございます。
ブラー効果はSSを撮る側としては、あまり綺麗に写らない(ただのギザギザに見える)
ことも多いので正直なところ微妙なんですよねw
でも、そういうところにこだわった演出も本当にすごいなぁって思います。
ぜひぜひ長めのイベントですが見直してみてくださいねっ。

> 光景が目に浮かぶようでした。
特にヴァナを知らない方にどういう場所か分かってもらいたくて、
くどくどと書いた部分もあったのですが、そういう風に言っていただけると嬉しいです。

追記の件については今のところ予定はないです。
Twitterについても過去も含めてこれまでアカウントを作ったことはありません。
そういうのあると便利かなーって思ったことはあるんですが、
私が管理しきれなくなりそうな気がするので、これからも作られることはないと思います。
ご要望ありがとうございました。
れあ│URL│04/23 10:49│編集
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